「地域通貨で家賃を?!ぶんじ寮とは」

Good Money Labインターン生 専修大学経済学部国際経済学科4年 岩間優希

東京都国分寺市で2012年から運用されている地域通貨「ぶんじ」について、

運営に携わる地域通貨ぶんじプロジェクトの冨本さんや「ぶんじ寮」で暮らす

皆さんに2023年9月にお話を聞いてきました。

 

ぶんじ寮外観 (soar https://soar-world.com/2022/06/28/bunjiryo/より引用)

地域通貨「ぶんじ」とは?

「お金」であり、メッセージカードでもある地域通貨として、国分寺で流通しています。お金のようなデザインの裏には、メッセージを書く10つの枠があり、「ぶんじ」を使用する際に贈り手へメッセージを書いて渡します。メッセージの内容に特定の決まりがあるわけではないですが、贈り手のことを考えて誰かのやさしさや丁寧な仕事に対する感謝の気持ちを示す言葉を記します。地域通貨「ぶんじ」には、100円に相当する100ぶんじ券と500円に相当する500ぶんじ券が存在しますが、流通しているのは100ぶんじ券が多いようです。

ぶんじの表                       

ぶんじの裏

「ぶんじ」をもらうには?

お店でおつりとしてもらう、イベントに参加する、誰かの仕事をお手伝いするなどの方法で受け取ることができます。

「ぶんじ」を使うには?

国分寺を中心に飲食店(カフェや食堂)や食品販売(パン屋、直売所など)、雑貨店、本屋、バードショップや動物病院など幅広い分野のお店、約30店舗で利用ができます。

利用方法は主に4つで、お釣りとして「ぶんじ」を受け取る、500ぶんじ券の使用ができる、ガチャガチャで「ぶんじ」を得る、取引所として誰かに宛てた「ぶんじ」や物を取り次いでもらうという利用方法があります。

各店舗でどのような利用方法ができるのかについては、公式ホームページを参照してください。

(国分寺地域通貨ぶんじ http://bunji.me/

↓以下に一部利用可能店舗と利用方法を掲載

☆「ぶんじ」についてお聞きしました。

・「ぶんじ」の発行元や運営はどこでしているのでしょうか?

→地域通貨「ぶんじ」の事務局です。

・これまでの「ぶんじ」の流通量はどれくらいですか?

→はっきりとはわからない、また定義にもよります。

 (「ぶんじ」は1枚に10つメッセージ記入箇所があるため1枚につき10回使えることになる。そのため流通量と通貨の発行量はまた別の数え方になる。)

・「ぶんじ」が利用される場所について、偏りはありますか?

→あります。個人間でのやり取りが多いです。

・メッセージでいっぱいになった「ぶんじ」はどうするのですか?

→事務局が管理しています。

 メッセージでいっぱいになった「ぶんじ」は「コンプリートぶんじ」と呼ばれ、レアなものとして価値があります。「コンプリートぶんじ」を集めて展示をしたこともあります。

・これからの展望を教えてください。

→「ぶんじ」で働くことができるようになるといいなと思っています。それだけ街の中に「ぶんじ」が出回っていて、街の人にとっても身近なものになるといいなと思います。

☆「ぶんじ寮」について

・「ぶんじ寮とは?

2020年11月より運営が開始されたまちの寮です。元々は地元企業が社員寮として使用していましたが、入居者の減少と退居に伴い市民が結成した「ぶんじ寮プロジェクト」によって借上げが行われました。国分寺駅から徒歩約15分で築70年、8畳ほどの部屋が22あります。風呂やトイレは共有で、畑や屋上があり、家賃約3万円で住むことができます。地域の縁側を目指して住民同士が助け合い、自分らしくいられる居場所として住民の自主性が大切にされています。家賃の支払いに「ぶんじ」を使用することができます。家賃のうち1000円以上を「ぶんじ」で支払うことが入居の条件でだそうです。

・「ぶんじ寮」の様子

 お部屋はほとんど常に満室とのことで、男女どちらも比較的若い人が多い印象を受けました。また、「ぶんじ寮」の中でこども食堂や「ぶんじ」を使用した数多くのイベントを開催しているそうです。それらの情報はFacebookで逐一配信しており、それを見て地域の人をはじめとして多くの方々が訪れるそうです。

地域通貨ぶんじのFacebookアカウント

ぶんじ寮のFacebookアカウント

↓ぶんじ寮のイベント例(Facebookより)

入居の理由とは?

都会の中でなかなかコミュニティを作りにくい若者や人との関わりを求めて入居を決めるケースや格安の家賃に魅力を感じるケースが多いようです。

住民の方々は様々な理由でぶんじ寮に入居し、働きながら週末のぶんじ寮で開かれるイベントなどに携わる方が多いそうで、楽しいことや面白いこと好きな住民が集まるとのことでした。

【所感】

地域通貨「ぶんじ」は、地域通貨を学ぶ中で紙媒体でも流通が続いていたり、活動が現在も活発であったりするという点で以前から興味がありました。
今回、2020年秋にオープンしたぶんじ寮を訪れて、その仕組みや意外にも若い世代が多く暮らしていることを知りました。
「ぶんじ寮」では、定期的にこども食堂や街の人たちも集まるイベントを開催しているそうで、地域のよりどころとして開かれた場所となっています。
また、住民同士で、夜ご飯を作ってくれたり、当番制である家事などの担当を変わってくれたりした際に「ぶんじ」をやり取りすることもあるそうです。キッチンが共用なため、住民同士が同じ空間で食事をとることも多く、そういった点でも都会には珍しい住民同士の交流の活発さを感じました。
「ぶんじ寮」には、入居以外にショートステイができるゲストルームが確保されており、地域外の方にも国分寺と触れ合う機会を開いているようにも思います。

このように地域通貨ぶんじでは、若い力や面白いもの好きの人々を中心に地域通貨を通じた活動が非常に活発です。
しかし、その一方で、担い手不足に悩む部分は確実にあるため、世代交代を狙う側面もあると言います。
その例としてU-35ぶんじを考える会など試案中の策もあるそうです。
「ぶんじ寮」は間違いなく若者と地域通貨を繋ぐ大きなきっかけになったということができるのではないでしょうか。
初めてお話を聞いた私もワクワクするような気持ちになりました。全国的に空き家問題もよく聞くので、地域通貨と合わせて町おこしのような形で応用することができたら、社会課題に重ねてアプローチできるかもしれません。
そんな未来に面白さを感じた一日でした。