たま楽市レポート

法学部政治学科3年 吉原侑希
文学部ジャーナリズム学科2年 小池佳欧

 はじめまして!専修大学法学部3年吉原侑希と専修大学文学部2年小池佳欧です。
2022年度と2023年度、”地域通貨たま”のイベントである「たま楽市」に参加させていただきました。今回は、私達が経験した2年間にわたるたま楽市と地域通貨たまの今後の展望について書かせていただきます。

たま楽市とは?

 まず、簡単に「たま楽市」について説明します。たま楽市というのは、「たま」運営委員会が主催している地域のお祭りです。目的は、当団体が発行している地域通貨たまを多くの人に知ってもらうためです。

 地域通貨たまはお金ではなく、ある種のコミュニケーションツールです。地域通貨たまを使って、感謝の気持ちを伝えることなどができます。

 2022年度、私達は専修大学リーダーシップ開発プログラムを通して、地域通貨たまの意味や役割について理解を深め、たま楽市を「たま」運営委員会と共に開催させていただきました。そして、2023年度もボランティアとして参加させていただくことになったのです。

地域通貨たま「50たま」

 

2022年度のたま楽市

 次に、2022年度のたま楽市についてお話させていただきます。この年はボランティアという形ではなく、開催者として関わらさせていただきました。また、メンバーは私達以外にも4人います。彼らと彼女らとは学校の授業を通じて出会いました。

この年の開催場所は、例年の根岸陸橋跨線下公園とは違い、生田緑地という広大な場所だったため、私達にまず求められた課題はイベントの集客でした。前回の参加者が300人だったので、私達は800人という目標を立てました。

 集客の主な方法としては二つです。一つはチラシの配布、もう一つはSNS活動です。

 チラシ配布は、登戸駅と生田緑地で行いました。「名前だけでも知ってもらいたい」という気持ちで目の前を横切る方たちに声をかけ、チラシを渡していきました。また、近隣の小学校や幼稚園を訪ね、配布のお願いもしました。

1100部以上印刷しました

この年の開催場所は、例年の根岸陸橋跨線下公園とは違い、生田緑地という広大な場所だったため、私達にまず求められた課題はイベントの集客でした。前回の参加者が300人だったので、私達は800人という目標を立てました。

 集客の主な方法としては二つです。一つはチラシの配布、もう一つはSNS活動です。

 チラシ配布は、登戸駅と生田緑地で行いました。「名前だけでも知ってもらいたい」という気持ちで目の前を横切る方たちに声をかけ、チラシを渡していきました。また、近隣の小学校や幼稚園を訪ね、配布のお願いもしました。

チラシ配布の様子

 SNS活動は、前からあったアカウントを引継ぎ投稿していきました。ストーリー機能を使い、たま楽市に親しみをもってもらうような投稿を心がけました。具体的には、「たま楽市」というお祭りの存在を前向きに知ってもらうため、私達学生の顔を載せることにしました。知らないお祭りですと、どうしても腰が重たく感じがちです。SNSを見た方たちに運営側の‘‘中の人”が分かることはとても大きな意味があるはずです。私達の顔を通して親しみを持ってもらうことで「お祭りがある」という実感を持ってもらえば、お祭りへの参加へ繋がるのではないかと考えたからです。

実際に運用したSNSアカウント

▴実際に投稿したストーリー

 このように集客活動を行った結果、当日は1000人以上のお客さんを集めることができました。次に当日行った企画について簡単に紹介します。

 規模も大きかったため、私達以外にも多くの出店者がいました。そのため、このレポートでは私達が出店したものを取り上げていきます。以下が、私達が出店したブース。

1、ウォークラリー

公園の入口がスタート地点、たま楽市の開催場所がゴール地点となっている。参加者はスタート地点からゴール地点を目指しながら地域通貨たまや生田緑地に関するクイズに挑戦する。
クイズの正解率が高い人にはお菓子が贈られる。

2、地域通貨たまのイメージキャラクター作り

参加者が地域通貨たまの特徴を元に絵を描くゲーム。

3、わなげ

お菓子を手に入れるためのゲーム。

4、たま知恵袋

参加者は自分の悩みを紙に書いてボードに貼り、その悩みを見た他の参加者が解決策を紙に書き、隣に貼って誰かを助けることが出来るコーナー。
解決策を提案した人には地域通貨たまが贈られる。

5、クイズ

地域通貨たまに関するクイズを解くゲーム。正解者にはお菓子が贈られる。

ウォークラリーによって、公園の入口からたま楽市の開催場所へ多くの参加者が足を運んでくださいました。全てのゲームが地域通貨たまの魅力を参加者へ伝えるゲームでありながら、生田緑地の良さ、年齢や性別を超えた人との繋がりの大切さを感じられるものとなっていました。特に「地域通貨たまのイメージキャラクター作り」は好評で、85人の参加者が熱心にキャラクターを考えてくださいました。イメージキャラクター作りを通じて地域通貨たまの特徴(下の写真)を多くの方に伝えることができました。

イメージキャラクターを考えてもらうときには、要望を説明したシートをみせながら、地域通貨たまの説明をしました。

 全体の反省点としては、たま楽市を開催するうえで、まずは「地域通貨たま」「たま楽市」の認知を上げるための活動に尽力していきました。結果として目標の800人を上回る1000人以上の集客をすることができたことは成果だと思います。しかし、足を運んでくれた方全員が「地域通貨たま」の仕組みや存在意義を理解したかというとそうは言えない部分もありました。たま楽市で、地域通貨たまの認知を拡大することはできましたが、そこからの使い方や存在意義の理解まで繋げることに難しさを感じました。

当日の様子

出店者たちの集合写真

2023年度のたま楽市

 2023年の10月28日(土)、川崎市多摩区枡形の根岸陸橋跨線下公園で開催されました。以前の生田緑地で行われた大規模なたま楽市とは異なり、今回は地元の子どもたちが普段から遊び場として利用する小さな公園での小規模なイベントでしたが、約100人の地域住民の方々にご来場いただきました。

例年たま楽市では地域通貨「たま」の会員が手作りのお菓子や手芸品、洋服を持ち寄り、駄菓子屋を開いたり、子どもたちに店番の体験を提供したり、似顔絵やコーヒーのサービスを提供したりしています。このたま楽市の大きな特徴は、品物のやり取りやサービスの提供を現金ではなく地域通貨「たま」で行うことです。たま楽市は地域通貨「たま」を実際に使用し、新しい会員の獲得や既存の会員との交流、地域住民とのコミュニケーションを目的として開催されています。今回のたま楽市も同様に、ミニゲーム、地元の名産品や手作り食品の販売、パフォーマンスが行われ、たま楽市が地域住民を繋ぐコミュニティの場となっていました。当日の出店内容は以下の通りです。

◆「たま」加盟店の商品販売

・ムーンライト(生田)の地ビール

・太田花店(多摩警察署近く)の生花

◆ゲーム

スマートボール、わなげ、シャボンたま、手づくりビリヤード

◆飲食

コーヒー、フランクフルトソーセージ、焼きおにぎり、豚汁

◆食品

駄菓子、梅酒、焼き菓子、しいたけ、みかん

◆その他

手づくりブローチ、ぬいぐるみ、事務用品、リサイクル品、アクリルたわし

◆パフォーマンス

① リコーダー演奏

地域の福祉施設で働くUさんがジブリの曲をリコーダーで披露。

② 歌唱

小学3年生の植木壱太さんがadoの名曲を披露。

(植木さんは童謡こどもの歌コンクールのグランプリ大会への出場が決まったすごい方なんです!)

 今年度は、ボランティアとして手伝わさせていただきました。当日は「スマートボール」という穴の空いた木の板にビー玉を入れる遊びの責任者として遊び方の説明を行いつつ、休憩時間には出店を訪問しました。私達が担当したゲームは主に小学生の子供たちが遊びに来てくれて、いつの間にかみんな説明をしていた私よりもゲームが上手になり、最後の方は私が小学生にゲームのコツを聞くなど楽しい時間を過ごすことができました。

飲食のお店ではコーヒー、フランクフルトソーセージ、焼きおにぎり、豚汁の全てをいただきました。とにかく全部美味しくて、作って下さった方の温かさを感じることができました。またバザーでは電子辞書が売られていて、現金ではなく「地域通貨たま」を使って交換しました。パフォーマンスはゲームの責任者をしながら遠くから拝見しましたが、中学生時代以来(6年ぶり)に聞いたリコーダーの優しい音色に心を癒されたり、小学3年生の植木さんがadoを歌ってくれた時は驚きの感情と共に迫力ある歌声に圧倒されたりしました。今年もたま楽市が開催されるということで、再びお手伝いをして、多くの方との交流や楽しい出店を楽しみたいと考えています。

地域通貨の展望

 2年に渡って「地域通貨たま」に関わらせていただく中で、地域通貨がいろいろな世代にとってのコミュニケーションツールになっているということを強く感じました。具体的には地域通貨たまを通して新しい出会いがあったり、助け合いができたり、コミュニティづくりが実際に行われていたりすることです。つまり、地域通貨の対象者は全世代であるということです。私達は「対象者は全世代である」というのが地域通貨の最大の特徴だと考えています。例えば、世の中にあふれている商品には対象年齢というものがあります。また、日常で使うお金でさえも、子ども達は自由に使えなかったり、増やせなかったりなどの使用制限がかかってしまいます。そのような中、地域通貨は子どもでも自分の意志で増やせたり、使ったりすることが可能なのです。

お金でもない商品でもない地域通貨は、それぞれの自治体で存在意義を設定できます。地域通貨たまは「感謝の気持ち」を表すということが主なコミュニケーションツールですが、それ以外にも様々な価値を設定できると思います。自治体それぞれにあった地域通貨をつくり、住民同士のコミュニケーションツールとして使用すれば、より大きく活躍できるのではないかと想像しました。

 そして、地域通貨を使うことで、地方の課題解決の一歩になるとも思いました。多摩区はまだそこまでではないですが、全国の地方では「過疎化」が進んでいます。過疎化が進むことで、地域同士の繋がりも薄くなり、活発でなくなっていくということが現代の課題として挙げられています。

 そのような中、地域同士の繋がりがないことで、多くの弊害が出てしまうことも事実です。その一つに私達は「共助」の問題があると考えています。災害以外でも、公的支援が回り切っていないからこそ、地域の人たち同士の共助はとても重要な役割を果たすと考えています。しかし、住民同士の繋がりが薄いと、いきなり完璧な共助をすることは不可能に近いです。そのために、日常的に地域の繋がりを活発化させることが必要であると思います。それが出来る一つに、私達は地域通貨を挙げます。地域通貨を通して、地域のコミュニケーションが活発となり、多くの自治体が抱える過疎化の課題点を解決する一歩になるのではないかと考えます。