メディアデザインと コミュニティドック 〜グッドマネーの創発へ向けて

お金はいま、新たな統合型コミュニケーション・メディアへと生まれ変わりつつあ ります。これまでお金は経済的取引のための流通手段、価値尺度、貯蓄手 段であり、単なる経済メディアでした。これからのお金は、言葉に近づき、 自然、 社会、文化上の多様な価値を表現・共有する社会文化メディアにもなるのです。では、どのような「お金」が望ましいのでしょうか?
人はみな個性を持っていて、性格や好み、考え方や価値観が一人一人異なります。人々が助け合いながら身近に暮らす場所である「地域」や同じ価値や関心を持つ人々の集団である「コミュニティ」もまた個性を持っていて、自然、 文化、社会、経済上の異なる特徴を持っています。地域やコミュニティの多様な個性を表現でき、一人一人が自分の「生活・人生の質」を高められる「お金」こそ、望ましいメディアではないでしょうか?
もちろん、その答えは一つではなく、たくさんあるでしょう。グッドマネーは単数ではなく複数です。そうした多くの答えを見つけるためには、まずお金を作ってみて、本当にどれがいいのかを調べたり選んだりしながら、みんなで探していくことが必要です。これが「メディアデザイン」です。
ただ、せっかくいいお金を導入したとしても、それに参加する人々や企業、自治体、NPOの考え方や価値観が従来の「お金」の仕組みに捕われたままでは、デザイン上の良さがうまく発揮されません。そこで、「コミュニティドック」が 必要となるのです。お金が全体としてどんな速度で流れているのかを測ったり、 どこを中心にどう流れているのかを可視化したり、人々の「生活・人生の質」上の満足度の変化を調べたりして、「お金」のパフォーマンスを定期的に診断します。それによって、参加者が過去の達成結果を知って意欲を高めたり、固定観念への捕われに気づいて自省し、思考・生活習慣を自分で変えたりすることで、良いお金の性能をより良く発揮させることができます。貨幣の制度や技術が変わるだけでなく、それに関わる人間やその集団の意識や価値観も変わる必要があります。
グッドマネーラボはメディアデザインとコミュニティドックを両輪とする「進化的制度設計」により、グッドマネーの多様な創発を手助けしていきたいと願っています。

グッドマネーラボ代表 西部 忠