Goodmoneylab / 2026年6月22日 RAMICS 2026 RIO ブラジルの地域通貨に関する報告 グッドマネーラボ 代表 西部 忠 RAMICS RIO 2026のカンファレンスとエクスカーションの全日程を終え、なんとか無事に帰国しました。 ブラジルで進化するCommunity BankとMunicipal Bank 今回、個人的にもっとも刺激を受けたのは、学会後に行われたエクスカーションでした。4日目と5日目には、ブラジルのCommunity Bank(コミュニティ銀行)とMunicipal Bank(自治体銀行)を訪問しました。どの訪問先でも3〜4時間にわたって熱心な議論が続き、現場の担当者や研究者との意見交換は非常に充実したものでした。Community Bankは、コミュニティ通貨とマイクロファイナンスを組み合わせた地域主体の金融機関です。その原点となったのが、1998年にジョアキン・メロによって設立されたBanco Palmas(パルマス銀行)です。私たちもこれまでパルマス銀行について調査研究を続けてきましたが、今回訪問して驚いたのは、その後の発展です。 コミュニティバンクについては、私たちも研究をしてきました。論文や参考文献としては、以下が挙げられます。西部忠他(2012)「ブラジルパルマス銀行調査報告書」https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/repo/huscap/all/49251/DPB104_new.pdf、小林重人,橋本敬,西部忠 (2012) 「制度生態系としてのコミュニティバンクと住民組織-ブラジル・フォルタレザにおけるパルマス銀行を事例として-」 『進化経済学論集』(進化経済学会)16 , 529-544、西部忠編著(2018)『地域通貨によるコミュニティドック』専修大学出版局、第6章所収) マリカ市のムンブカ銀行 学会4日目には、リオデジャネイロ州マリカ市にあるムンブカ銀行を訪問しました。ムンブカ銀行は、もともとCommunity Bankの考え方を引き継ぎながらも、自治体が主体となって運営するMunicipal Bankへと発展した事例です。ここではデジタル地域通貨「Mumbuca」が運営されており、市民は日常の買い物だけでなく、公共料金や税金の支払いにも利用できます。さらに、市の福祉給付金もこの通貨を通じて支給されています。地域通貨が単なる地域活性化ツールではなく、市の政策そのものを支えるインフラになっている点は非常に印象的でした。 ニテロイ市のアラリボイア 学会5日目は、ニテロイ市を訪れ、社会通貨「Arariboia(アラリボイア)」の取り組みを視察しました。この制度は、コロナ禍の2021年に創設されたもので、低所得者支援と地域経済の維持を目的としています。給付されたアラリボイアは市内の登録店舗でしか利用できません。そのため、給付金が地域外へ流出せず、市内で循環する仕組みになっています。 アライボイア銀行とその周辺ショップ 視察では、連帯経済ショップ、アラリボイア自治体銀行、プリヴェントリオ・コミュニティ銀行を訪問しました。地域通貨が福祉政策や地域経済政策と結びついて実際に運用されている様子を目の当たりにし、大変勉強になりました。 コミュニティ銀行(community bank)プリヴェントリオ銀行とプリヴェントリオの紙幣 日本への示唆 今回の視察を通じて感じたのは、ブラジルでは地域通貨が単なる決済手段ではなく、地域福祉や経済政策を支える社会的インフラとして発展しているということです。 日本でもデジタル地域通貨の取り組みは増えていますが、その多くはポイントやプレミアム商品券の延長線上にあります。一方、ブラジルのMunicipal Bankは、福祉、所得保障、地域経済循環を一体的に考える仕組みとして機能しています。 もちろん、日本とブラジルでは制度や社会状況が異なります。しかし、自治体主導のデジタル地域通貨が今後どのように発展しうるのかを考える上で、多くのヒントを与えてくれる事例だと感じました。 今回のエクスカーションは、これまで参加したRAMICSの中でも間違いなく最も学びの多いものでした。残念ながら参加できなかった方も多かったため、まずは簡単な報告として共有させていただきます。 また機会があれば、今回の視察内容についてもう少し詳しく紹介したいと思います。 Facebook 180